貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

「与織子ちゃん⁈」
「与織子！」

突っ立っていた私を見て２人が声を上げる。創ちゃんはすぐに立ち上がると、呆然としていた私の元へやって来た。

「体調はどうだ？　大丈夫か？」

創ちゃんは、さっきの会話などなかったように心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「……あ、えと……」

衝撃で涙なんて引っ込んだ。今のはいったいなんだったんだろう？　とただそれだけ考えながら創ちゃんの顔を見上げていた。

「与織子ちゃん。何か食べる？　好きだって聞いたから野菜スープ作ってるの。温めてくるわね？」

澪さんは微笑みながら私達の横を通りすぎキッチンへ消えていった。創ちゃんはその姿を見送ると、また私に視線を戻した。

「……なんで泣いてたんだ？」

心配そうな表情のまま、創ちゃんはまだ消えていない私の涙を指で拭う。

「……私のせいで……創ちゃんが澪さんと結婚できないんだって思って……」

　絞り出すようにそう言うと、創ちゃんは途端に顔を顰めた。

「なんで澪と……。澪は従姉妹だし、あいつが結婚したい相手は俺じゃない」
「本当に……？」
「なんで嘘を言う必要があるんだ？」