貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
顔を顰めたまま、はぁ、と息を吐くと創ちゃんは私を座るように促す。私がソファに座ると、隣に並んで創ちゃんも座った。

「その……。悪かった。清田にも叱られた。本当に付き合ってるんだと思って応援してた。家の事情で振り回すのは止めてって」

苦しげな表情で創ちゃんは私に頭を下げてそう言った。勝手に清田さんに喋ってしまったことは怒ってないみたいだ。でも、私はなんと返していいのかわからず、黙ったまま創ちゃんを眺めていた。

「そうだよな。家というより、俺の事情で与織子を振り回した。それは否定できない。俺といるのが嫌だと言うなら……身を引く覚悟はできてる」

覚悟、という言葉を使ったのに、そんな表情じゃないと思う。身を切られているような、痛ましいほど哀しい瞳で私を見ていた。

「……嫌だ。私は……覚悟なんてできない。苦しかったし、つらかった。……私は偽物なんだって……思ってたから。でも……」

私はそう言うと、固く握られた創ちゃんの手を包み込むように自分の手を重ねた。その手が緩むと、私の手をゆっくりと握り返してくれた。いつもの、温かくて優しい大きな手だ。

「与織子は……偽物じゃない。ずっと……会いたかった」
「……うん」
「待たせて……悪かった」

そう言って、そっと頭を撫でられる。

「本当だよぉっ……」

温もりを感じながら、私は鼻声で創ちゃんに返していた。
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