貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
気恥ずかしくて顔を上げられない私の頭を、創ちゃんはしばらく撫で続けてくれた。それからゆっくりその手が下りてきて、私の顔を撫でると持ち上げられた。

「また……泣かせてしまったな」
「でも、創ちゃんはいつも私を泣き止ませてくれるよ?」

私がそう言って笑うと、創ちゃんも口元を緩めて微笑んだ。

「これからは、ずっと笑っていてくれ。あのとき、畑でそうだったように」
「……覚えてたんだね。私、忘れてたのに」
「忘れるわけ、ないだろう」

創ちゃんは懐かしそうに目を細めると私の頰を撫で、ゆっくりと私との距離を縮めていく。鈍感な私でも、何をされそうなのか察して、ギュッと目をつぶった。

「そっ! 創一っ!!」

その叫び声に弾かれるように私たちは離れると、その声の方向に振り返った。
ダンダンダンと凄い足音で、凄い形相で、こちらに向かってきたのは……。

「いっちゃん⁈」
「一矢……」

驚いている私と、溜め息を吐く創ちゃん。そして、鼻息荒く向かってくるいっちゃんと、呆れ顔の澪さん。

「いっちゃん、もう帰ってきたの? まだ6時なのに」
「与織子! い、今、何しようとしてたんだ!」

私の質問はまるで無視して勢いよく尋ねられる。

「一矢には関係ない」

なんだか不満気にそっぽを向いて答えたのは創ちゃんで、それに「なんだと? 誰の妹だと思ってるんだ!」と噛み付くようにいっちゃんは返していた。
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