貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

食べ終わるのを待っていたのか、私が空になった皿をテーブルに置くと澪さんがまず口を開いた。

「与織子ちゃん、どう？　落ち着いた？」
「はい。ご馳走様でした」

冷えていた指先も、温かいスープのおかげか、今はホカホカしている。その指を握ると、私は決心して顔を上げた。

「あの。私、何も知らなくて。澪さんは全部知ってるんですか？」

その質問を澪さんは余裕のある笑顔で受け止めた。

「そうね。もしかしたら私が一番知ってるのかも。全然ややこしくないはずの話をややこしくしたのはこの男どもだしね？」

笑いながらも、なんだか凄い圧だ。現役時代にボールを見つめるその姿を思い出してしまうくらい。そして、その圧を感じているのは、私じゃなく、決まりの悪い顔を背けている２人だ。

「創一！　与織子とは偽装じゃなかったのか！　だから俺は許したのに！」
「お前がそう言うと思ったから、そう言うことにしたんだ。だいたいお前が、俺に相手が見つかるまで自分も結婚しない、なんて言い出すからだろう！」
「仕方ないだろ！　川村の長男差し置いて俺が先に結婚するわけにいかないだろうが」
「だから俺は、澪のために動いたんだ！」