貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
誰に尋ねるわけでもなく、私は一番の疑問を口にする。元々お父さんが言い出した、うちの山を狙う者。ただの口実なのかも知れないけど、何か隠されている気がする。そして、それを肯定するように、いっちゃんは途端に難しい顔をして見せた。

「……創一。また動き始めたぞ? 何か心当たりは?」

真剣な目つきで、いっちゃんは創ちゃんに視線を送る。

「今頃? いや……。何も」

創ちゃんは仕事中のような鋭い表情で少し考えてから答えた。

「お前、与織子を守り切れる自信、あるんだろうな?」

また、私の知らない何か。けれど、私に関わる何かの話だ。私は固唾を飲んで2人の様子を伺っていた。

「当たり前だろう。何があっても守ってみせる」

いっちゃんはそれを聞くと私のほうを向いた。

「与織子。もう隠し事はしない。今から全部話すから聞いてくれ」

真面目な顔のいっちゃんに、私は黙って頷く。そのあといっちゃんは、大きく息を吐き出したかと思うとこう言った。

「しっかし、まさか創一の拗らせ片想いの相手が与織子とはな……。可愛いだろうって自慢するんじゃなかった!」
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