貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私には滅多に見せることのない真剣で鋭い眼差しのいっちゃんが語ったのは、想像以上に大きな私自身に関わる話。

実のところ、いっちゃんも全容は知らなかったらしい。お父さんから聞かされていたのは断片で、だからこそ、私の婚約は偽装ということで納得したのだと言う。もちろんそれは同じ話を聞いていたふう君も同じらしい。

そして、澪さんが知っていたのは、創ちゃんに結婚相手が現れるまで、いっちゃんも結婚しないと言い出したことと、実は創ちゃんはこの婚約が本気だったと言うこと。

結局、全てを偽りなく把握していたのは創ちゃんだけだったのだ。

「ったく。俺はお前とあのタヌキ親父どもにまんまと一杯食わされたってわけか!」

最終的に創ちゃんから話を聞いて、いっちゃんは悔しそうに頭を掻いている。

「タヌキ親父、ども……?」

誰のこと? と創ちゃんの顔を見上げると、「うちの父……と、怜さんのことだ」と渋い顔で答えた。

いっちゃんは、また大きく息を吐くと立ち上がった。

「とりあえず、俺は会社に戻る。澪に突然呼び出されたから仕事ほったらかしだ。澪も帰るだろ? 送るぞ?」
「そうね。私ももう用事は済んだし、そうしようかな」

そう言って澪さんも立ち上がると、いっちゃんのいるソファの背面に回った。
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