貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「確かに……、中学生で初恋なんておかしいよな?」

 そう話す振動と、笑っているのか揺れが伝わる。

「創ちゃんなら……今まで彼女の一人や二人いてもおかしくないかなって」

 創ちゃんの胸に向かって私が思いを吐き出すと、宥めるように背中を撫でられる。

「付き合った相手がいない、とは言えないが……。お前だけだ……」
「……? 何が?」

 少し上を向いて尋ねると、私の顔を覗き込む創ちゃんの、照れたような顔。

「可愛いな、って思ったのは」
「か、か、可愛いっ⁈」

 身内以外にそんなことを言われたのは初めてで、思わず声を上げてしまう。そんな焦っている私を見て、創ちゃんは肩を揺らして笑っている。

「もしかして……また揶揄ってる?」

 ものすごく居た堪れない気持ちになりながら、今までで一番と言っていいくらいに笑う創ちゃんに言う。

「いや? 至って真面目に言ったんだがな? そういうところも可愛いと思って」
「…………」

 もう何も言えなくて、無言で創ちゃんを見上げる。でも、たぶん顔は真っ赤なんだと思う。そっと私の頰に触れた創ちゃんの指が、ひんやりして気持ちいいと思うくらい。
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