貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私は専務の執務室の前で深呼吸していた。
備品倉庫のすぐ隣。本来なかったはずの専務の部屋は、この備品倉庫を半分にして作らせたのだと聞いている。だから、倉庫の扉にある『開閉注意』は、専務が通るようになってから貼られたのだ。
私はもう一度大きく深呼吸をしてから、意を決してその扉を叩く。中から「どうぞ~」と軽い調子の返事が聞こえ、私は扉を開けた。
「失礼します」
私がそう言いながら中に入ると、正面には満面の笑みをたたえた専務が応接用のソファに座っていた。
「与織子ちゃん、そんなところで突っ立ってないで座りなよ?」
「いえ。私はこちらで……」
なんとなく座りたくなくて、私はぎこちない笑顔で答えた。
「そう、残念。まぁいいや。本題に入るけど、与織子ちゃん。川村が今日いない理由、知ってる?」
なんで……専務はこんなにも嬉しそうなんだろう?
私の心には暗雲が立ち込めているのに、専務の顔は晴れやかだ。
「いえ……存じ上げません」
ギュッと両手を握りしめて私は答えた。
「だろうねぇ。川村は今、とある場所で捜査を受けている」
「え……?」
私は呆然としたまま、それだけ口にする。
「不正取引の疑い。川村がこの1年、裏でやってきたことの証拠は上がってるんだよね?」
備品倉庫のすぐ隣。本来なかったはずの専務の部屋は、この備品倉庫を半分にして作らせたのだと聞いている。だから、倉庫の扉にある『開閉注意』は、専務が通るようになってから貼られたのだ。
私はもう一度大きく深呼吸をしてから、意を決してその扉を叩く。中から「どうぞ~」と軽い調子の返事が聞こえ、私は扉を開けた。
「失礼します」
私がそう言いながら中に入ると、正面には満面の笑みをたたえた専務が応接用のソファに座っていた。
「与織子ちゃん、そんなところで突っ立ってないで座りなよ?」
「いえ。私はこちらで……」
なんとなく座りたくなくて、私はぎこちない笑顔で答えた。
「そう、残念。まぁいいや。本題に入るけど、与織子ちゃん。川村が今日いない理由、知ってる?」
なんで……専務はこんなにも嬉しそうなんだろう?
私の心には暗雲が立ち込めているのに、専務の顔は晴れやかだ。
「いえ……存じ上げません」
ギュッと両手を握りしめて私は答えた。
「だろうねぇ。川村は今、とある場所で捜査を受けている」
「え……?」
私は呆然としたまま、それだけ口にする。
「不正取引の疑い。川村がこの1年、裏でやってきたことの証拠は上がってるんだよね?」