貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
翌日金曜日。
いつもより早く出社した私は、人目につかないよう真っ直ぐ専務の部屋に向かった。もちろん、書いてきたものを渡すために。
昨日、帰ってから部屋でひっそり届けに記入した。本籍地なんて覚えているはずもなく、参考にしたのは前に書いた婚姻届。
正式に婚約したあと、創ちゃんから『与織子が持っていてくれ』と渡されていたのだ。まさか、それを見ながら別の人との婚姻届を書くことになるなんて思わなかったけど。
扉をノックして部屋に入ると、今日も上機嫌の専務がソファに凭れ掛かるように座っていた。
「やぁ、おはよう。持ってきてくれたかい?」
「……はい。ここに……」
そう言って茶封筒を差し出すと、専務は余裕の笑みを浮かべてその中身を取り出した。
「戸籍謄本は? 持ってないの?」
届けを広げてそこに視線を落としたまま専務は言う。
「持ってないです……」
そんなものがいること自体知らなかったし、本籍地は地元。すぐに取りに行けるわけはない。
「さすがにそうだろうね。仕方ない、直接出しに行くしかなさそうだ。にしても、田舎だねぇ」
呆れたように専務はそう吐き出すと、届けをまた封筒にしまった。私はそれを黙って聞いていた。
「じゃあ行くか。今から出ても着くのは昼だろうし」
いつもより早く出社した私は、人目につかないよう真っ直ぐ専務の部屋に向かった。もちろん、書いてきたものを渡すために。
昨日、帰ってから部屋でひっそり届けに記入した。本籍地なんて覚えているはずもなく、参考にしたのは前に書いた婚姻届。
正式に婚約したあと、創ちゃんから『与織子が持っていてくれ』と渡されていたのだ。まさか、それを見ながら別の人との婚姻届を書くことになるなんて思わなかったけど。
扉をノックして部屋に入ると、今日も上機嫌の専務がソファに凭れ掛かるように座っていた。
「やぁ、おはよう。持ってきてくれたかい?」
「……はい。ここに……」
そう言って茶封筒を差し出すと、専務は余裕の笑みを浮かべてその中身を取り出した。
「戸籍謄本は? 持ってないの?」
届けを広げてそこに視線を落としたまま専務は言う。
「持ってないです……」
そんなものがいること自体知らなかったし、本籍地は地元。すぐに取りに行けるわけはない。
「さすがにそうだろうね。仕方ない、直接出しに行くしかなさそうだ。にしても、田舎だねぇ」
呆れたように専務はそう吐き出すと、届けをまた封筒にしまった。私はそれを黙って聞いていた。
「じゃあ行くか。今から出ても着くのは昼だろうし」