貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
澪さんが明るく返すと、いっくんが深々と礼をした。

「はいっ! ふつつかものですが、よろしくお願いしますっ!」

部活終わりの挨拶なのかとツッコミたい大きな声に、突っ込んだのはりっちゃんだ。

「逸希。お前が言う台詞じゃない。国語の勉強やり直し!」

そんなやりとりに皆で笑っていると、部屋の奥に置いてあったパーテーションの向こう側からお母さんが顔を覗かせた。

「あなたたち! こっちまで丸聞こえよ? お母さん、恥ずかしいわ?」

頰を染めながらこちらにやって来たお母さんに、私たちは体を小さくしながら謝った。

「さ、みんなあちらの皆さんにもご挨拶して?」

見えていなかったから気づかなかったけど、向こう側にほかにも人がいたようだ。

「私の両親もいると思うから紹介するわね?」

歩きながら澪さんが言うと、ふう君は途端に顔を引き攣らせ、「ちょっとお嬢! 社長いるなら先に教えてくれよ!」と小さな声で抗議していた。

「まだまだねぇ、颯太は」

澪さんはそう笑って返した。
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