貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「和を以て貴しとなす。私は、この精神で旭河を大きくして参りました。この言葉には、いくつかの意味が含まれています。一つは、協調することの大切さ。しかし、ただ協調するだけではなく、そこには議論することも必要だと」
そう言えば……大学時代、教授もその言葉の意味を教えてくれたことがある。
『ただ、仲良くしなさい、と言う意味じゃないのよ? 正しいものは正しい。間違っていることは間違っている。そう言う関係になりましょう、と言う意味ね。そしてもう一つ……』
私はそう語る、穏やかな教授の顔と、同じことを語る社長、いや、教授の旦那様の顔を重ねていた。
「私は旭河グループ全部に対し、上下ではなく、同じように手を取り合う仲間と言う認識で接してきたつもりです。しかしながら、ここで残念な報告をしなくてはなりません」
雲行きの怪しくなってきた社長の言葉に、周囲からも騒めきが起きる。
私も、それに息が詰まったように、握った手を胸に当てて俯いた。
どうしよう……。もし、それが、私にとって最悪の事態だったら……。
ギリギリと痛くなる心臓を押さえていると、不意に後ろから腕を引かれた。
「えっ?」
ステージを照らすために落とされていた照明で、そんなにはっきりとその姿は見えない。後ろを振り返る間もなく、「静かに」と囁くような声がして、そのまま私は端まで連れ出された。
そう言えば……大学時代、教授もその言葉の意味を教えてくれたことがある。
『ただ、仲良くしなさい、と言う意味じゃないのよ? 正しいものは正しい。間違っていることは間違っている。そう言う関係になりましょう、と言う意味ね。そしてもう一つ……』
私はそう語る、穏やかな教授の顔と、同じことを語る社長、いや、教授の旦那様の顔を重ねていた。
「私は旭河グループ全部に対し、上下ではなく、同じように手を取り合う仲間と言う認識で接してきたつもりです。しかしながら、ここで残念な報告をしなくてはなりません」
雲行きの怪しくなってきた社長の言葉に、周囲からも騒めきが起きる。
私も、それに息が詰まったように、握った手を胸に当てて俯いた。
どうしよう……。もし、それが、私にとって最悪の事態だったら……。
ギリギリと痛くなる心臓を押さえていると、不意に後ろから腕を引かれた。
「えっ?」
ステージを照らすために落とされていた照明で、そんなにはっきりとその姿は見えない。後ろを振り返る間もなく、「静かに」と囁くような声がして、そのまま私は端まで連れ出された。