貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
立ち上がった清田さんに、主任は顔を上げて淡々と言う。それに清田さんは「ありがとう!さすが、持つべきものは仕事のできる同期!」と笑顔で返した。

「与織子ちゃんも、金曜日は私出社するし、遠慮なく休んでね」
「はい。ありがとうございます」

そのまま清田さんは帰って行き、私はまた自分の机にあるパソコンに向かう。また次の書類の束を手にしながら、来週……どうしようかなぁ?と考えていた。

実家に帰るつもりだったけど、弟達が不在なのだ。いっくんは部活の合宿、りっちゃんは塾の合宿。そうなると帰ってもすることないし、会社に来てたほうがいいかなぁと思っているのだ。

まぁ、月曜日に決めればいっか、と私はまた仕事の続きに取り掛かった。

もう定時は近い。今日は少し残業かもと思っていたころ、「ちょっと待て……」と隣から主任の、聞いたこともないような焦った声が聞こえて来た。

「朝木、そっちのも見せてくれ」

私は手元にあった最後の入力の束を差し出すと、主任をそれをパラパラとめくる。
そして、「やっぱり……」と苦々しい顔をして溜め息を吐いた。
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