貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私は机に出ていた文房具を引き出しに入れ、鍵をかけるとパソコンの電源を落とす。主任の机の上はすでに綺麗で、パソコンの画面も暗くなっていた。

「荷物は?」

主任は立ち上がって私に尋ねる。

「ここに置いてます」

そう言って私は机の下から自分のバッグを引っ張り出して持った。更衣室もあるけど、着替える必要もないから面倒でロッカーはほとんど使っていない。席をそう離れることもないから、いつも机の下のカゴに放り込んでいるのだ。

「じゃあ先に廊下に出てろ。もう全員帰ったから戸締まりしてくる」

そう言うと主任は、私の返事も聞かずにさっさと奥へ向かって行ってしまった。

なんか……不機嫌になる内容のメッセージでも来たのかな?

勝手に想像しながら、私は言われた通りに主任を待ち、それからしばらくして出てきた主任がメインの出入り口の鍵を締めるのを眺めた。

「待たせた。行くぞ」

いつもと同じで素っ気ない主任の背中を追うように私はあとを追いかけた。
そして、

「乗って」

そう言われて、私は困惑しながら主任を見上げていた。
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