貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
連れてこられたのは、ビル内の地下駐車場。送ると言われたけど、てっきり駅までだと思っていた。と言っても、いくつかある最寄駅のどれを主任が使っているかなんて知らないんだけど。

「主任……。車通勤だったんですか?」

ウチの会社、それOKだったっけ?と思いながら尋ねると、主任は少し顔を顰めて答える。

「今日は残業覚悟だったから最初から申請してたんだ。普段は電車だ。いいから早く乗れ」

そう言うと主任は、格好いい黒のスポーツカーの助手席を全開にした。

「はい……」

私の戸惑いなんて気にする様子もなく、さっさと主任は運転席側に足を向けている。私は仕方なく、その革張りのシートに乗り込んだ。

いっちゃんがこんな車に前乗ってたな……

そう車に興味があるわけじゃないからよくわからないが、内装はよく似ている。結構いいグレードなんだろうな、と勝手に想像ながらシートベルトをしていると運転席に主任が乗り込んできた。流れるようにシートベルトをしてエンジンをかける主任をなんとなく眺めていると、主任とバチっと目があった。

「なんだ?」
「え、あ、なんでもないです!」
< 61 / 241 >

この作品をシェア

pagetop