貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「え?なんですか?」

聞き取れなかった私がそう言って聞き返すと、ウインカーがカチカチ言う音がして車は路肩に停められた。外を見ると、うちのマンションは目の前だ。
そして主任のほうを振り返ると、主任は軽く溜め息を吐き私の問いに答えた。

「……同じビル内のグループ会社なら交流もあるだろう。顔見知り程度だ」
「そう……なんですね」

納得したわけじゃないけど、そう言われたらそう思うしかない。みー君に聞いてもきっと同じような返事が返ってくる気がする。

もう着いたのに、前を見ながらボーッとそんなことを考えていると、隣でカチャリとシートベルトの外された音がした。

「それより朝木……」

そう言うと主任は私のほうに体を傾ける。

えっ?えっ?

私の頭の中は軽くパニックだ。私の体に覆い被さるんじゃないかっていうくらい主任は私に近づいている。もちろん私だって、異性にこれほど近づかれたことが無いわけじゃない。でも、それは身内限定だ。

や、やっぱり狼なの⁈
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