貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私がエントランスに向かうと、いっちゃんは怖い顔のまま私に向かって来た。

「与織子!」
「なぁに?いっちゃん。そんな怖い顔して」

私はいっちゃんに、至って普通に尋ねる。

「今の!何もされてないか⁈」
「今のって……?」

もしかして、私の超勘違い行動を見ていたのだろうか?でも、なんでそんなに怒ってるみたいな顔をするんだろう?と私は謎に思った。

「その、キ……」

ようやくそこでいっちゃんが何を言いたいか理解して私は盛大に笑い声を漏らした。

「やだなぁ、いっちゃん!シートベルトを外しながらドアを開けてくれたからああなっただけだよ。私にそんなことする人いるわけないじゃない!」

私はそう冗談めかしていっちゃんの腕を軽く叩く。言ってて虚しくはあるけど。そして、あからさまにホッとした顔をして、いっちゃんは歩きだした。

「いや、お前が可愛いから、俺は心配なんだ」
「それは身内フィルターだって。もしかして、いっちゃんも男はみんな狼派なの?」

いっちゃんが開けたオートロックを入り、ロビーを通り抜けながら私はそう尋ねてみる。みー君のあれだっていっちゃんの入れ知恵かも知れないし。

「なんだ?それは。だが、あながち間違ってないから与織子も気をつけるんだぞ?」
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