貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「あのなぁ……」

肩を落としながらいっちゃんが言ったところで、エレベーターの到着を知らせる音が鳴る。私達はそれに乗り込と、いっちゃんがボタンを押してくれた。

「そうだ与織子！」

話題を変えたいのか、突然いっちゃんはそう声を張り上げた。

「ど、どうしたの？」

私は弾かれるように肩を揺らしながらいっちゃんに尋ねた。

「明日の話なんだが……」

一瞬、明日ってなんだっけ？なんて首を傾げる私を他所に、いっちゃんはその続きを話し始めた。


そして、帰っていつものように鶴さん特製ご飯を食べ、急に襲って来た睡魔と戦いながらお風呂に入り、ベッドに入ると秒で寝てしまった私が次に目を覚ますと、もう翌日になっていた。

「おはよ～……」

さすがに慣れない残業で、まだちょっと疲れている気がする。時間はとっくに９時を回っていると言うのに、私はパジャマ姿でぼんやり歩きながらリビングに入っていった。

「おはよう、与織子。まだ眠そうだな」

リビングのソファでタブレット片手に爽やかな顔をしたいっちゃんにそう言われる。私はその横に腰を下ろしながら、「うん……。まだちょっと」と答えた。
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