貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
この高級ホテルに相応しい、見事な高級ランチがテーブルに並べられると、スタッフさんは部屋をあとにしていった。

「冷めないうちに食べろよ?」

緊張ではなく混乱で固まっていた私に、主任はナイフとフォークを手に声を掛ける。

「……はい」

しばらくは2人して無言で食べた。まだ会社にいる時のほうが会話が弾むのに、いったい何から聞いていいのかわからない。けど、やっぱり順を追って聞いて行かないことには何も解決しない。

「主任も……うちの山狙ってるんですか?」

まず一番最初にそれを聞いてみる。何故か何人かに狙われているあの山。主任ならその山の価値を知っているはずだ。
けれど主任は「山?」と、いっちゃんと同じように不思議そうな顔をした。

「私、父から言われたんです。うちの山を狙ってる御曹司とお見合いしろって。それって主任のことなんですよね?」

真っ直ぐに主任に向いて尋ねると、面食らったような表情を見せて手を止めた。
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