貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
「俺は……全く違うことを聞かされている」
「違うこと?」
「そうだ。俺は、とにかく朝木与織子と見合いして、そして結婚しろと」
「へっ?」

確かに、普通ならお見合いは結婚を前提として行われるものだ。けど、私はお見合いしろとは言われたけど、結婚の"け"の字も聞かされていない。

「結婚⁈ 主任が、私と、結婚するんですか⁈何で!」

そこで主任は、はぁーっと深く息を吐いた。

「おそらくだが、朝木の言う、山を狙うやつが横取りしてくる前に、なんとか囲い込めということだろう」
「…………。専務……」

私は心当たりのある人をポツリと口にする。どう考えても専務の態度はおかしい。それに、『困る』って言っていたのは、山が手に入らないと困る、じゃないだろうか?

私が神妙な顔をして考えていると、主任は訝しげに「何かされたのか?」と私に尋ねた。
こうなったら全部話すしかない。謎だらけの専務より、いっちゃんの友達だって言う主任のほうがよっぽど信用できる。

「あの、主任。じつは……」

私は顔を上げ、主任を見据えると昨日あったことを話し出した。
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