貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
私は揶揄われているんだろうか……。もしかしたら、このお見合い自体が盛大なドッキリ?

急に楽しそうな表情になった主任を見て私はそんなことを思った。

目の前のご馳走も無くなるころ、スタッフさんがデザートの飲みもののオーダーを聞きにやって来た。

「俺はホットコーヒーで。朝木は?」
「あ、アイスミルクティーで」

と言うか……。やっぱり揶揄われてたんだ。早くも朝木呼びに戻ってしまった主任を見て私は思う。

「ああ、そうだ。次に寄りたいところがあるんだが、一緒に来てくれるか?」
「はい……。私でよければ」

ようやく食べ終え、水の入ったグラスを持ち上げながら私は答える。

「じゃあ、悪い。ちょっと外で電話してくる。デザート、俺のぶんも食べてていいぞ?」

そう言って主任は立ち上がり、部屋を出て行った。

その姿が見えなくなったのを見届けると、私は「はぁぁ~……」と肩を落とすように息を吐き出した。

怒涛の展開とは、こう言う事態を言うのだろうか。
なんか勢い余って婚約を了承したけど、もちろん……偽装ってことでいいんだよね?なんて今更思う。でもさっき主任は、『口先だけだとすぐバレる』と言っていた。と言うことは……偽装じゃない?

考えすぎて、頭から煙が出そうだ。ちょっと落ち着こうと、私はバッグからスマホを取り出して通知を確認した。
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