青い星を君に捧げる【弐】
俺と黒鉄の会話が丁度途切れた時、呼んでいたタクシーがやってきた。


「俺はこれ以上話せない」


「……お前はハルのことを全て知ってるんだな」


「あの男が遺した願いという名の枷が今ハルを生かしている。じゃなきゃお前らと会うとうの昔に自殺してる」


なんて皮肉なことだろうか。あの頃死を望んでいたリリィを生に縛り付けていたのは佑真さんが与えた枷だった。


「____お前はこれからどうする。黒鉄慎」


問いかけに応える声は夜空の下にはなかった。


とんでもない女に好意を寄せてしまったな、なんて黒鉄に同情する。そしてこれ以上の会話は無用と判断した俺はドアが開いたままのタクシーに乗り込んだ。


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《side.本郷リリィ(ハル)》

騒動から一夜明け、私たちはホテルのエントランスで集合させられていた。


まだ眠り足りないのか2人がけのソファで隣に座る彼方がうつらうつらと船を漕いでいる。慎もどこか上の空で、天井にあるシャンデリアをぼーっと眺めていた。


この様子を見て、私はやっと日常に戻ってきたんだと実感した。
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