青い星を君に捧げる【弐】
歳は俺と同じく20歳。俺と一緒にいればそれだけで恨みを買うのに不思議な男だ。


「わ、私の顔に何がついてますかっ!?」


随分と長い間流水の顔を見ていたようで、勘違いしたこいつはペタペタと自らの顔を触って確かめている。


「……大黒天など面倒だと思っていただけだ。着替える」


立ち上がり歩き出した俺は流水に手に持っていた書類の束を投げる。そうすればバラバラと舞う紙を慌てて拾おうとするやつは俺にはついてこない。

執務室を出た俺は私室へと歩き出した。

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本郷家本邸内、椿の間。三天が一角、本郷家が率いる大黒天の会議が執り行われていた。半年間の報告、他の家や組の動きを共有、不正を働いた家紋の懲罰。


……心底くだらないな。


手にしていた茶の入ったグラスを話していた男の声をかき消すようにテーブルに置いた。

俺の顔色を伺いながら報告をしていた男が肩を揺らし、声色が上擦る。


ここにいる者たちは1人も俺と目を合わせない。もしもこの黒い眼と視線が合おうものなら真っ青な顔をする。


人を治めるのは恐怖が1番手っ取り早い。

たとえそれで孤独になったとしても。
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