青い星を君に捧げる【弐】
そう言うと女は慌てて瓶をテーブルに置いて謝る。

「ももも申し訳ございません。その、えっと、当主様の黒い瞳が綺麗だったもので」


「はっ、面白い。お前はこの場にいる誰よりも強いな」


決して誰も俺と目を合わせようとはしなかったのに。俺が築いた高い塔を数秒で登ってきてしまった。


「光栄です?」


女と話していれば、これまで苛立っていた心が風を知らない泉のように穏やかになる。だから油断していた。


____グラリ



「一様!!?」

宴会会場にいる者たちに気付かぬよう小さな声で俺の名前を呼んだ流水は傾いた俺の体を支える。幸いこの異変に気づいた者は流水と目の前にいる女のみであった。


「また眠れていないのですか?」


流水の支えを退かし、痛む頭を手で押さえる。


こんなことは日常生活をしている上で俺にはよくある事だ。医者には見せていないが恐らく不眠症の類である。


弱点を覗かせれば喰われる。だから隠してきた。今まで流水以外の人前で不調は起きなかった。


眠らなくなったのはいつからだろうか。恐らく親や兄弟を殺した日からだ。これは言わば命を奪ってきた者からの呪いだ。


「____大丈夫ですか」


テーブルに投げ出されていた俺の左手が暖かさを感じた。
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