青い星を君に捧げる【弐】
雅が傍にいない今、私はこの男性が本郷家内でどのような立場の人か知らない。故に我慢するしか出来ないのだ。


胸がもやもやと、ずきりと傷んだ。


ハジメ様の隣に私以外の女性が立っているところなんて考えたくない。そう思ったのに。


「本郷家当主、本郷一様ならびに川瀬綾乃(カワセ アヤノ)様ご入場!!」


藤の間に入ってきたハジメ様の隣には小柄で可愛らしい、誰からも愛されていそうな女性が腕を絡ませていた。


黒いインクが水に落ちて侵食していくように、私の心は醜くも嫉妬というものを覚える。


「どうです?我が娘、綾乃は当主様と婚約している仲なのですよ。あなたが付け入る隙などありはしない」


男性__川瀬様は私の耳に顔をぐいと近づけ、余所者が当主様の傍にいるのは名に傷がつくのだ、と可笑しそうに言った。


言い返すことは出来ない。権力のある後見人はおろか、実の両親もいない私には抗えない問題だ。


「……大丈夫です。あの方たちの、邪魔は……しないので」


川瀬様と目を合わせるのが辛くて、どんどんと視線が下がっていき終いには自らの足元を見つめていた。


私の返事に機嫌を良くした川瀬様は、当主様とそして一緒にいる綾乃様の元へと向かっていった。
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