青い星を君に捧げる【弐】
他のステージが始まったことを確認してから会場にこっそりと戻る。やっと一息できると飲み物でも取りに行こうとした時。


「素晴らしい演奏だった。ピアノを弾けたんだな」


「は、ハジッ……ング!!」


背後から突然声をかけられ振り返ると遠い場所にいたはずの彼がいて、思った以上に大きな声が出ていたようだった。周りに気づかれたくない様子のハジメ様はすかさず私の口を大きな手で覆う。


「すみません、ハジメ様と今日話せると思ってなくて……嬉しくて。あの、お誕生日おめでとうございます。今日という特別な日にハジメ様と一緒にいられる時間があったこと嬉しいです。生まれてきてくれてありがとうございます」



今日はあとどれほど時間を共に過ごせるかわからない。だからか、不思議と勝手に口が動く。


私が顔を上げるとハジメ様は驚いた様子でいらっしゃった。その瞬間私はずっと心の奥底で抱いていた違和感の正体に気づいた。


今日の彼を見た時から感じていた。いつも通り好き勝手振る舞う姿を見るたびに、苦しそうな表情をしていたのを。どうして、と疑問を口にする前にハジメ様の唇が先に動く。


「お前は、俺が憎くないのか。勝手に本郷家に買われて自由を奪われ、敷地外にもろくに出られない。それなのに何故俺と会えて嬉しいと言えるのか俺は心底理解できない」
< 135 / 154 >

この作品をシェア

pagetop