青い星を君に捧げる【弐】
「今夜、百合の宮へ行くからその時に渡してくれないか」


「はい、お待ちしております」


"今夜"その言葉を理解出来ないほど鈍感ではない。期待してもいいのだろうか。


「……手を」


ハジメ様は頭から手を離すと流れるように、私へと腕を伸ばした。

なんの取り柄もない私がそれを取ってもいいのかな。ステージでは催しが行われているはずなのに、視線を痛く感じる。


「他のことは考えなくていい。俺だけのことを考えて、お前の意思を教えろ」


考えがまとまらないのがバレたのかハジメ様はそう仰った。


どきん どきん


伸ばした手が、指が震える。だけれど、それまで潜んでいた恐怖はない。


指先がそっと彼の掌に触れて、それから花を摘むように最上級の優しさで私の手を包んだ。


どんどんこの方を恋い慕う気持ちが積のる。これじゃあ、諦めることなどできない。


____一様


凛とした声が私の空気を吸う音をかき消した。ハジメ様が私を掴んだまま振り返る。


綾乃様だ。


「その方はピアニストですよね。どういったご関係で?」


にっこりと口元は笑っているものの、怒りと戸惑いを孕んだ声色は隠しきれてない。
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