青い星を君に捧げる【弐】
《side.黒鉄慎》

ここのところ火天のことで色々あったからか波瑠の様子がほんの少し違うことには気づいてた。だから青蝶に預けてみたんだが…どうやら正解だったようだ。


青蝶総長の林から送られてきた写真にはいつものように笑う波瑠がいた。おまけというように余計な文面もついていた。


『姫さんにはどうやら好きな人がいるらしいけど、あんた知ってたかい?』


そんなもの知っていた。知ってて見てないふりを俺はしてた。青龍創立記念の日、あの時見せた波瑠の表情を今でも忘れない。


____彼は私にとって大切で大好きな人


星空を見上げるふりをして彼女を盗み見ていた。一体どんな男かはいらない。だけどその時今の俺には敵わないと悟った。悟って見ないふりをした。…ずるいだろうか。


一緒に過ごしていくうちにいつか波瑠の心に隙間ができた時に入り込めたら、と思ってる。


「慎!!鳴海が打ち合わせに来たぞ」


杏里の声にハッと思い耽ることを止め、ソファから立ち上がる。今はこんなことを考えてる時じゃない。頭を振って雑念を飛ばし、スマホの電源を切った。

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「火天からの宣言により決戦は10月25日、旧製紙工場の大駐車場跡地。工場のデータを探したんですが、増築解体が繰り返されていて大まかな地図しか手に入れられなかった」


杏里がプロジェクターに映し出したマップは確かに目が痛くなるようなぐちゃぐちゃとした旧製紙工場の内部構造が。


「でもぶつかるのは大駐車場なんやろ?内部まで把握が必要なんか?」


「……情報があるに越したことはない。俺が頼んだ」


ただしここまでの内部構造だとは思っていなかった。火天の幹部たちがどういう奴らなのか未だ掴めてない今、できる対策はこれくらいだ。残り二日……どうする。


「鳴海…乱気流の様子は?」


「変な動きはないようですね。手を貸すという考えには代わり無いようです」


「……そうか」


数もパワーもおそらくこちらが上。だけど火天はそんな勝算があって仕掛けてる。何を見落としてるんだ俺は。


____シャラン

ツキに貰ったピアスが音を立てる。ずっと隣にいた湊がいない今、俺は仲間を守れるだろうか。


なあ月桂樹。俺はお前にこのピアスを返せる日が来るのだろうか。
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