青い星を君に捧げる【弐】
「堕ろせ。その腹の中にいるそれを」


"あのこと"がハジメ様の耳に入ってしまったのだと悟った。同時に彼が今まで大切にして下さっていた私たちの子を"それ"呼ばわりしたことが悲しかった。


ハジメ様がお怒りになっている原因は承知だ。


『アイラ様のお身体は恐らく出産に耐えられません。今も刻々と赤ちゃんによって生気を奪われています』


今日の定期検診でそう医師に告げられた。迫られているのだ。私の命か、この子の命か。


「私はこの子を産みます。例えそれで私の息が止まろうとも。……この子は私とあなたの希望ですから」


「やめろ……お前が死んだら俺は……。また、独りになる」



入口でずっと立たずんでいた彼が足早に近づくと私を抱きしめた。


「あなたは独りにはなりませんよ。この子がいるじゃないですか」


「お前じゃないと意味が無いんだ」


頭上から聞こえる掠れた声を聞くと胸が痛む。ハジメ様の大きな背中に手を回し、大丈夫だよと摩る。


「……この子を必ず守ってあげてください。この子は私たちの子供ですから。愛してあげてください、私にそうしてくれたように」


ひゅっと息を呑む音が嫌に大きく聞こえた。ハジメ様を置いていくのは私だって辛い。それでも、私はこの子の____母親なのだから。
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