青い星を君に捧げる【弐】
なあ、アイラ。今になってやっとお前が欲しかったであろう質問の答えがわかった気がする。


____ハジメ様は氷が溶けたら何になると思いますか?


俺はあの時『水』だと言ったけど、お前が欲しかった言葉は……。


「春になるんだな」


寒い冬が作り出した氷が溶けると春が訪れる。そうして新しい命が芽吹き、美しい花々が咲く。


俺の冬はリリィと過ごしていく中でいつの間にか春へと変化していった。

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年月は経ち、リリィは2歳になった。仕事の都合で中国へと赴く際に俺はリリィも連れて行った。


「当主様、お初にお目にかかります。新しく当ホテルの支配人になりましたのでご挨拶申し上げます」


本郷が運営している中国のホテルに滞在中、そのように挨拶を受けた。そして支配人に俺の腕に抱かれているリリィを紹介すると家族での記念写真を当ホテルで一枚どうかと提案された。


思えば俺と娘が2人で一緒に写っている写真は存在しない。中華飾りに目を奪われキョロキョロと忙しなく顔を動かすリリィを見て、家族写真もいいかもなと柄にもなく思う。


本郷家は多くの者から恨まれやすい。それ故に、この腕の中にいる愛おしい存在と決別しなければいけない日が来るかもしれない。
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