青い星を君に捧げる【弐】
いつか訪れるかもしれないその時のために思い出というものは大事だろうから。


____カシャッ


俺と、抱き上げられたリリィが穏やかな笑顔を浮かべる写真が後日送られてきた。


これが娘と写る唯一の写真となったのだった。


𓂃◌𓈒𓐍

中国から帰ってきて数週間後。


珍しく屋敷の外での会議のため本郷家から離れていた。……その隙を狙われたのだ。


会議中、退席していた流水が慌てた様子で入室し俺に耳打ちする。


「本郷家に侵入者あり。本邸ではなく、百合の宮を占拠したようです」


"百合の宮"という言葉を聞いて平然ではいられなかった。血が滲むほど握りしめた拳をテーブルに振り下ろす。


周りで伺うように様子見していた奴らが十色の反応を示した。


……もしもリリィに傷でもつけようものなら死よりも苦しい粛清を。


「流水、帰るぞ」


会議をそっちのけで隣で立っていた流水に指示し、車を用意させる。


「あの、当主様……会議の方は」


はあ?と立ち上がりながら発言者を睨みつけると謝罪の言葉が返ってきた。


間抜けな奴らだ、そんなに俺の顔色を伺うなら無駄口を叩かなければいい話なのに。
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