青い星を君に捧げる【弐】
《side.鳴海》

「鳴海!!一条のとこ行ってくれるか?俺たちは青髪の二人を追う」


「わかりました。気をつけて」


お前もな、と杏里さんに背中を叩かれて俺は一条が行った方の道に。彼方さん、杏里さんはもう二人の方に走っていった。


誘い込まれるように入り組んだ道を走る。この増減築を繰り返された製紙工場を舞台に選んだのも、戦いずらさという点があるからだろう。


先を行く一条の背中を追っていると、いきなり開けた場所に出た。ある程度は地図を覚えてきたはずだったが…こんなとこ記されていただろうか。


「乱気流初代総長、それが俺の肩書きだ」


「…そんなの知ってる。なぜ裏切った?」


体当たりされれば男2、3人は平気で吹き飛ばせるだろう恵まれた大きな体格。乱気流は青龍に負けたものの、結成されてから今までの勢いは凄かった。

それも全てこの男がトップを張ってたから。


「確かに俺たちは青龍に一度負けた。…だからと言って俺たちが必死に作り上げてきたチームが誰かの言いなりになるなんざ気に食わなかった」


「乱気流は青龍の傘下に下った。だけど黒鉄総長はお前らに選択肢をくれただろう。言いなりなんかじゃない」


この抗争に出るか出ないかだって別に強制していたわけじゃない。一度だって黒鉄総長が強いるようなことをしたことはない。それは同盟の黒龍にだってそうだ。


「お前は黒龍を創設したわけじゃないだろう。俺たちは違う。こんなことをやりたくて今まで踏ん張ってきたんじゃねぇんだよ!!!!」


一条がいきなり踏み込んで腹に衝撃がくる。予期せぬ行動に受身の初動が大幅に遅れ、もろに拳を喰らって吹き飛ばされる。


「くそが…グッ、馬鹿力かよっ」


殴られたところを押さえながらよろよろと立ち上がる。骨は大丈夫そうだけどあざになりそうだなぁ、こりゃ。


「鳴海、別にお前を恨んでるわけじゃねえが……ここで潰れてもらうぜ」


目の前まで既に迫っていた拳をなんとか重い体を捻って回避する。それと同時に奴の重心がブレた瞬間を見逃すことなく左膝を鳩尾に入れる。


俺と代わるように今度は一条が痛そうに腹を押さえて俺のことを下から睨む。


「これでも俺だって黒龍総長なんでね。簡単にはやられない」


立ち上がった一条と拳がぶつかり合う。一瞬でも油断すれば負ける。全神経を一条へと注いだ。忙しなく動き続ける体。飛んでくる攻撃を捌いて、自身も攻撃を飛ばす。
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