青い星を君に捧げる【弐】
葵ちゃんは部屋に積まれていた鉄骨に腰を下ろした。彼女が着ている見覚えのある特攻服に私は顔を歪ませる。


「アンタを恨んだ葵は復讐のためにこの火天を作った」


千秋-元宮弟-が座っていた私の腕を掴むと膝立ちさせた。両サイドに兄弟が立つ。昔のあの明るい笑顔の彼女とは似ても似つかない姿。


「手始めに大切にしてるものから壊させてもらう」


「青龍幹部2名はもう潰したぜ」


「彼らは関係ない…もうこんなことやめて」


足元を見つめ顔に影を落としていた葵ちゃんは組んでいた手をピクリと僅かに震わせる。遠くで大きな音がした。きっと慎たちが暴れている。


「千秋、(レン)。そいつの拘束といて抑えて」


千秋が腕と脚を抑えていたものを取ると兄弟に両方の二の腕を骨が軋むほど掴まれる。開けたところだからか葵ちゃんの履いているブーツヒールの音が響く。


私の前で足を止めた彼女は憎しみに溢れるガーネットで私を睨んだ。その目は幾度も見てきた。向けられてきた。


「お兄ちゃんを終わらせたあんたがふざけるな!!!!!」


熱が引いてきていた、先程殴られた頬に再び衝撃が加わる。鉄の味がして視界がまわって気持ち悪い。

胸ぐらを掴まれて一気に葵ちゃんとの距離が近づく。彼女は怒りで元々大きな瞳がより大きく広げる。


「私はずっとお兄ちゃんをそばで見てきた。戦い方もこの目に焼き付けてる。それにあんたとお兄ちゃんの戯れるように組手していた姿も覚えてる。今の私はあんたよりもずっと強い!!」


「葵ちゃん…ごめん。ごめんね」


謝ったって取り返しがつかないこといぐらい理解してる。こんな言葉一つで深く抉れた彼女の心は癒されないことも。


「葵ちゃん聞いて。佑真はあなたに…」


その時このホールの大きな鉄扉が鈍い音をたてて開かれた。

顔だけ背後に向けるとその先頭には息を切らせて、あちこちに傷を作った慎。彼に続いて剣斗や鳴海さん、青龍・黒龍がいた。


「みんな…」


慎は私の姿を捉えると小さく表情を崩した。胸ぐらを掴んでいた手を離した葵ちゃんは兄弟に何やら手振りで指示する。


「おら立てや」


千秋と蓮-元宮兄-に腕を持ち上げられて慎たちがいる方向へと180度向きを変えた。正面に向き直れば、杏里と彼方がいない。さっき言ってた幹部2人はきっと彼らだ。


「お前があの火天総長なのか」


「正体不明の総長が女でびっくりしてるみたいだね、青龍総長?」
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