青い星を君に捧げる【弐】
予期せぬ後方からの攻撃にアグニは先ほどまでの勢力を弱める。その隙に杏里と彼方を中心に青龍は立て直す。


「……これなら大丈夫そうだ」


覆った状況に私もノンちゃんも胸を撫で下ろす。どうなるかと思ったよ、ほんと。


その時、アグニの1人を殴り飛ばし肩で息をしていた彼方の背後に鉄パイプを持った男が。


「かなた!!!!」


少し空いた窓から私の声が聞こえたのか彼方は振り返るが間に合わず、頭に思いっきり鉄パイプは振り落とされた。


彼方は一瞬持ち堪えるように膝に力を入れたが、その場に倒れる。頭からは血が流れている。


私は居ても立っても居られなくてノンちゃんの止める腕を押し退けて一階へと向かう。


「かなた!かなたしっかりして!!」


頭を揺らさないように肩を叩いて意識の回復を図るが戻ることは無い。それどころか後頭部からの流血が止まらないのだ。


「ノンちゃん!救急車呼んで!」


「わ、わかった」


ノンちゃんは慌ててスマホを出すと電話をかける。幸いアグニは引き始めているようで、周りには敵はいない。


「総長さんよー覚悟しておけ。ここにいたのはアグニの3分の1にも満たない構成員だ。それに幹部もいない。次ぶつかる時は潰す」


最後に残ったアグニの1人が言った。バイクでけたたましい爆音を出しながら去っていく。


「波瑠!彼方は!?」


戦いを終えた杏里がこっちに走ってくる。近くにいた下っぱくんたちも自分たちの怪我は二の次で心配してくれた。


「今ね救急車呼んだから、もうすぐで来ると思う」


「そっか…俺たちもこんなだから波瑠が一緒に乗っていって。着替えたら俺達もすぐ行くよ」


綺麗だったはずの特攻服は汚れていて、突然だったこともあり中に着ている私服も所々血がついている。それに顔とかにも怪我をしていた。


「……それから次はこんな危ない真似するな」


頭が重たくなったと思ったら慎が疲れた顔をして腕を置いていた。いつものお団子の髪が解けたのか、雑に1本にまとめられている。


「お前が傷つく所を俺たちは1番見たくないんだ」


「ごめんね、慎。でもね私も皆のこと大切なんだ」


「……お前はそういうやつだから、だから言っただろ"勝手に守る"って」


そう言って慎は呆れたように、だけど口角を上げた。
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