青い星を君に捧げる【弐】
「…ありがとう。頑張れって言ってくれて」


「俺たちも、帰ろう」


歓喜の中、慎は立ち上がって私に手を差し伸べた。その時いつもは髪で隠れている耳が抗争後で乱れた髪の隙間から覗く。


それはいつかの過去に助けた二人組の男にあげたもの。忘れるわけない。あれは世界に一個しかない、藤野佑真がオーダーメイドで作った彼のピアス。大切なものなのに、なぜかあの時片方をあげたんだ。


いつまでも手を取ろうとしない私に慎は首を傾げた。しまいには涙を流し始めた私にオロオロと狼狽える。


「彼が…全部繋げてくれたの?」


あなたが蒔いた種はこんなにもすでに成長していたのね。


「やっぱどこか痛いのか?」


「ううん…違うの。嬉し泣き!!」


頑張ったねって生きろと言った彼からのプレゼントだ。これは幸福だ。涙と血と傷でぐちゃぐちゃな私の笑顔を見た慎も微笑んだ。


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青龍vs火天の決戦は青龍の勝利で幕を下ろした。両族負傷者多数だったものの、死亡者はゼロ。火天総長含めた幹部たちの失踪により火天は実質の解散。



旧製紙工場の入り口付近にで待機していた青蝶のメンバー、特に真希さんにこっぴどく怒られた私は必死に謝って今度カフェで奢ることで許しを得た。


青龍の中でも大怪我を負った杏里と彼方はすぐに入院になり三日が経った今日、無事退院したのだった。



「いや〜お前らがこんなにコテンパンに傷つくってるとこなんて初めて見たぜ」


勝利の打ち上げとしてミモザの英治さんが青龍倉庫に料理をたくさん持ってきてくれていた。


「僕は課題が見えたなぁ。もっと鍛えないと」


「彼方…」



「大輝さんに稽古つけてもらいに行くよ」


「お前はもう少しは大人しく療養してろ」


同じく元宮兄弟にやられた傷を持っている杏里がチキンの乗った皿を持って彼方をこずいた。


わちゃわちゃと賑わった倉庫内。また日常が戻ってきてよかったと心の底から思った。料理をとっていると、隣に慎が来る。


「慎もこれ?」

大皿に乗っているピザを一緒に取り分けようと尋ねるが返答がない。


「明日、出かけないか?二人で」


「い、いいけど…どうしたの急に?」


「……10時に、駅で」


それだけ言うと慎は英治さんの方へと行ってしまった。これは、葵ちゃんが言いそびれた“私の正体”についてだろうか。


火天との戦いはそれぞれの心に思うものを残した。こうして思考に耽る夜が訪れる。
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