青い星を君に捧げる【弐】
「……なんか見たいやつないのか」


入口で貰ったマップを何気なく見ていれば、横から慎が覗き込んできて言った。そんな彼を見て私は吹き出して笑う。


「?なんかあったか」


「ぷっ、あはは!!今日の慎、なんだか子どもみたい!ふふっ、鏡みてみな」


ポーチから小さな鏡を開いて彼と向かい合わせると、目を丸くさせる。その姿は更に私のツボへとヒットした。


さっき食べていたチュロスの砂糖が口の端に付けている慎はムスッとしながら親指で素早く砂糖を取る。


「次行くぞ」


「ふふ、はーい」


そのあと色々動物を見て回って、ふれあい広場にも子供たちに混じって遊んだ。

不良の中の不良で青龍総長の男がちょっと羊にびびってるとことか面白くて私のスマホの中には動画が残った。慎は消してほしそうだったけど、拡散しないことを条件に削除は避けられた。




日が傾いてきて楽しい時間も終わりに近づく。私たちは動物園を出てコーヒーショップでドリンクをテイクアウトして自然豊かな公園の階段に並んで座った。


きっとこの男は知りたがっている。私が何者なのかを。探求心が旺盛なのはいいことだ。しかし、世の中には言えないこともある。たとえそれが信頼出来る仲だとしても。


「……火天の総長の兄貴とお前の関係はなんなんだ?」


まさかそんなとこから話が切り出されると思ってなくて少し右隣にいる慎の方に視線がずれる。慎からは見えてないだろうけど確実に私は動揺していた。


「…藤野佑真とは付き合ってて、今も好き。でも彼は3年前に亡くなった」


口が乾いてカスタムしたコーヒーを1口飲んだ。慎のおすすめのカスタムだからやっぱり甘い。


「彼はつかめない性格で、飄々としていて。だけど譲れない芯のようなものを持っていて……そして私を暗闇から引き上げてくれた」


どうすればいいのか分からなくて、ずっとひとりぼっちで生きていくのかと思っていたあの頃。彼は人との関わり方そして愛することを教えてくれた。



「佑真にね初めて会った時、私は彼に殺されるんだって思った。でもそれは私を逃がすためで…。靴まで落としちゃってさ、シンデレラみたいですねって彼は笑ってたけど…私にとって藤野佑真は人生の王子様だった」



「……おれも、好きなやつがいる。紳士で完璧であろうとしてるが…なかなかうまくいかないな、恋愛は」


「意外。慎に好きな人とかいるんだ」


「全く脈ナシだけどな」
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