青い星を君に捧げる【弐】
「彼はつかめない性格で、飄々としていて。だけど譲れない芯のようなものを持っていて……そして私を暗闇から引き上げてくれた」


まるで宝箱を開けた時のようにきらきらと輝いた声色で言った。どろどろと溢れてくる感情に蓋をする。


彼女から語られる藤野佑真は俺と正反対で、どんなことがあっても彼女を守れるという自信があるに違いない。自分のそばにいれば安全だと言い切れる男。


届かない


「佑真にね初めて会った時、私は彼に殺されるんだって思った。でもそれは私を逃がすためで…。靴まで落としちゃってさ、シンデレラみたいですねって彼は笑ってたけど…私にとって藤野佑真は人生の王子様だった」


それでも…俺は彼女のことを諦めるなんて無理だ。たとえ子どもみたいだと言われて、彼女の理想から逸れたとしても。俺は……欲が深いから。


「……おれも、好きなやつがいる。紳士で完璧であろうとしてるが…なかなかうまくいかないな、恋愛は」


もうぜんぶぜんぶ弾けて、いっそ消えてしまえ。たとえその答えが分かっていたとしても。


「好きだ」



隣に座る波瑠が目を白黒させて驚いている様子に笑ってしまった。こんなにも困惑されると思ってなかったもんだから。


「……ははっ!おまえのそんな顔初めて見たかもな」



やっぱり消えてほしくない。たとえ彼女に想われなくてもこの想いはまだ抱いていたい。諦められない、そんな恋。


「慎、ごめんだけど私は「やめろ…」」


「やめてくれ。おまえが他の男を好きなのは分かってる。だけどまだ…まだチャンスはあんだろ。だからまだ言わないでくれないか?」


掬っても流れ落ちていく水のように落ちる彼女の言葉を遮るように彼女の口元を手のひらで覆った。


結果なんて最初からわかってる。それを音にされそうになっただけ。


身体が重たい。息が苦しくなる。心臓がいたい。ずくんずくんと嫌に心音が響いて追い詰められる。


「…わ、わかった。言わない」


切なげにこっちを伺うように波瑠は俺を見るが目が合うとふい、と気まずそうに目線を下ろした。


そうやって、俺の想いに困ればいい。考えてほしい。俺は欲が深いから…届かないと気づいても……諦めない。
< 37 / 154 >

この作品をシェア

pagetop