青い星を君に捧げる【弐】
《side.佐久間彼方》

火天戦の打ち上げの次の日。俺はとある人と河川敷で待ち合わせしていた。久しぶりに訪れたそこに懐かしさを覚えて坂になってる草野の上に寝そべる。


青龍に入る前…まだそこらへんの悪ガキをしていた時までよく来ていた。


目を瞑ると火天との抗争時の記憶が蘇る。ぼは元宮弟に最も簡単に負けた。あれは波瑠と火天の総長のことがなくて純粋な抗争だったならば僕たちは敗戦だ。


もっと強くならないと、そう決意した。


すっと心の奥底に眠る熱が動くのを感じる。その時寝そべっていた僕の肩に何かが触れた。


『元気だったかい?ってその姿を見たら言うまでもないね』


「……大輝さん」


苦笑いしながら大輝さんは伝える。今の僕は顔の傷にガーゼや絆創膏がついていて、まあ見た目は手負い。でも動けるくらいには回復している。


「大輝さん、僕に修行…つけてください」


『彼方が頼ってくれるなんて、久しぶりで腕が鳴るね』


頭に温もりが触れる。僕よりも背が高い大輝さんが優しい眼差しを向けて撫でていた。幼い時…彼に助けられてから、そのあたたかさは変わらない。それはきっとこれからもずっと。


僕は立ち上がって大輝さんと野坂を下って川近くの平らな野へ歩く。


大輝さんは僕の憧れの人だ。強くて、優しくて、あの頃の僕にとってヒーローだった。だから僕もこの人のように、そして超えられるように生きたいんだ。


『手加減はしないよ』


着ていたパーカーを脱いだ大輝さんに続いて僕も上着を脱ぐ。少し緩んだシューズの紐をきつく結び直した。


「もちろん、よろしくお願いします」


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「ハァハァやっぱ大輝さんはつっよいね!!ハァかっこいい!!」


一旦休憩、と言われてそのまま野原に体を大の字にしてうめる。買ってきていたのだろうミネラルウォーターを大輝さんからもらって喉を潤す。


『彼方の成長が感じられて俺も嬉しいよ』


僕よりも息の上がっていない大輝さんはさすがだ。無駄な力が入ってない。


『…彼方にあの技を教えようかな。いつかきみの役に立つ時が来る』


「えっなになに!?」


大輝さんは口元に人差し指を持っていって、にっこりと微笑んだ。こんなこと今までなかったから興奮する!!


『これが俺からのさいごの教えだ』


僕はぶんぶんと、もげるんじゃないかってほどに首を振る。さっきまでの疲れがなかったように吹っ飛んでいった。
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