青い星を君に捧げる【弐】
_____僕の一番最初の記憶はそりゃ酷いものだ

𓂃◌𓈒𓐍

《side.佐久間彼方》

寒い…冷たい……痛い。寒さで皮膚を貫くような痛みに襲われる。家にいるのに吐く息は白かった。親が帰って来さえすれば暖房がつくのに。


親というものは無償の愛を子に与えて、優しいものだと本で読んだ。でもそれは嘘。そんなの一般論。


少なくとも僕の親はそんな奴らじゃなかった。社会のクズ。お荷物。


父親ぶる男は酒にタバコ加えてギャンブルに日々明け暮れていた。しかも負け続けの。借金をたらふく作った後、いつの間にかどこかへ消えた。僕の母親ぶる女に借金を擦り付けて。


母親ぶる女は毎日のように男を家に呼んでは、遊んで暮らしてた。美人の部類に入る人だったから。それでも僕が5歳になるまでは面倒を少しは見てくれてた。


だけど、5歳のとき…父親が家を出てから母親は変わった。悪魔が憑依したように。


「あんたは子どもなんだから外でも行きなさい」


「いやだ!!こわいっ、やめて!!!」


抵抗虚しく、もうすぐ暗くなる時間に家から追い出された。がちゃがちゃと玄関扉を必死に開けようとするけど、既に鍵はかけられている。開く気配がないそれを見つめて、どうしよう……とその場にうずくまった。


寒い…上着なんか取るタイミングなくて、薄着。このままじゃ寒さで死んじゃう。そう思って僕はいつも行く公園へ向かった。


公園はもう誰もいなかった。そりゃそうだ。みんな帰って暖かい家にいるのだから。せめてもと、風避けになるドーム型の遊具の中に入る。体育座りをしてできるだけ身を縮こませた。


「ん?……きみこんな時間に何やってんの。迷子?」


遊具の中を覗き込んできたのは金髪で制服を着た男だった。制服を着てると言っても結構着崩されているし、所々にかすり傷のようなものもある。


「ちがう。追い出されたの」


「ふーん、とりあえず寒そうだから、これ羽織りな」


男はしゃがんで体を小さくするとなんとか遊具の中に入ってきて、俺に制服の上着をかけてくれた。窮屈そうに僕の正面に男は座る。


「俺は佐野大輝(サノ タイキ)ね」


「……ぼくは、佐久間彼方」


「じゃあ彼方、お前なんか悪いことでもしたの」


そんなんじゃない、と首を横に振った。ふむ…と大輝さんは顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。


「毎日ここに?」


「最近はずっと。朝になったら静かに家に入るの」
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