青い星を君に捧げる【弐】
手加減して追いかける遼玄さんだが、すぐに追いつかれてさっきのように抱き上げられる。


「離してよー!パーンチッ!!!」


この前から大輝さんが師匠となって格闘を教えて貰っている。遼玄さんの顎に下から殴ったと思ったけど、見切られていたのか軽々避けられた。


「まだまだ敵わないんだから、俺に文句言うな」


「ちぇー…遼玄さんなんかすぐに追い越してやるんだから」


「おうおう、その意気だ坊」


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ちびっ子な僕が大輝さんの次に強いと言われてる遼玄さんに勝てるはずもなく……散々ボロボロにされ、疲れて地面に転がっていた。


「僕もみんなと同じそのカッコイイ服欲しいなぁ」


息を乱す様子もなく寝転ぶ僕の近くに立っている遼玄さんは手に持っていた物を僕に見せるように広げた。


「お前がこれを着るのは10年ぐらい早ぇ。これは俺たちの誇りだからな」


「それなんて読むの?青色のあおに…むずかしい」


「りゅう…な。これは『青龍』ってんだ。遼玄さんは青龍の副総長なんだぞ」


背中に書かれた青龍の文字に、他にも難しい漢字が多く書かれている。袖にも書いてあるけど読めない。


「総長はやっぱり大輝さん?いちばん強い?」


「そうだ…だけどな覚えとけ。総長を1番強いってだけで選んでるんじゃない。1番仲間思いで優しいやつがなるもんだ」



「でもでも負けたら意味ないじゃん!」


遼玄さんはフッと僕から視線を外しながら笑うと、遠くで楽しそうに騒いでいる青龍の仲間たちを見る。


「だから副総長とか幹部、メンバーが支えんだ。チームはみんなで守るもんだから」


「……僕ももっと強くなって青龍に入りたい!!!その時は入れてくれる?」



「知らね。坊が青龍に入れる頃には俺たちゃここには居ないからな」


さあ、再開するぞーと腕を無理矢理引き上げられてヨロヨロ立ち上がる。やっぱりこの後も遼玄さんにはやられっぱなしだった。


青龍幹部である英治(エイジ)さんは料理が上手で晩御飯としてオムライスを作ってくれた。そのあと遼玄さんにはさっさと寝ろと言われたけれど、大輝さんが帰ってくるまで僕はテレビを見て待っていた。



暖かくてふわふわしたものに包まれる感覚がするけど、重たい瞼は上がらない。微睡みの遠くで大輝さんや遼玄さん、英治さんの声がする。


「……おやすみ、彼方」


今日あったこと大輝さんに話したかったのに…考えに反して意識は遠のいていった。
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