青い星を君に捧げる【弐】
大輝さんたち青龍と出会ってから家でビクビクすることも無くなっていた。それは自分自身が強くなったからなのもあるし、母親に見捨てられても居場所があると知ったから。


「お前は実の母親に売られたんだよ、可哀想になぁ。まあ1日くれてやるから最後の夜を楽しむんだ……あははは!!!」



そんな日常もすぐに崩れ去った。




父親が残した借金は母親に被せられて、そしてその重みに耐えられなくなった彼女はとうとう僕を裏社会に売ったらしい。


遊んで家に帰るとリビングのソファに怖い男の人がいて、そう言われた。母親はヒステリックを起こして手につくものを僕に投げる。


「これでやっと!!!あんたの顔を見なくて済むよ!!!初めて感謝してるよ、そんな可愛らしい顔に生まれてくれてねえ」



「っ!!なんで…なんで!!!僕がなにしたって言うの!!!」


「そもそもあんたが生まれてこなきゃ…あんなくそ男と結婚するつもりもなかった。あんたが生まれてきたのが悪いんだよ」



それを聞いて僕の中で怒りを抑えていた壁にヒビが入って崩れた。ソファに座ってタバコに火をつけようとしている母親に殴りかかる。


母親は避けるなんてことも出来ずに床に飛ばされた。そして手に持っていたライターはぼろぼろな絨毯に落ちて勢いよく燃え出す。火はソファにもすぐに引火して、火が回る。



「はっはっ!!??いや……死ぬならあんただけで死ね!!!」


僕を見て恐怖に染まった表情の母親は殴られ赤くなった顔を抑えて玄関へ逃げていく。それを見て僕は我に返った。…今、ぼくは、人を……殺そうと、した?


「あっ、あっ……ヒュッ」


目の前が真っ暗になって、呼吸が苦しい。それに加えて日の回りが早くて既にリビングは火の海。あつい。


「ハッ……ひゅ、は」


どうすればいいかわかんなくて、その場に蹲る。ごめん、大輝さん……ぼく…。


____ 俺はお前の師匠で、お前は俺の弟子だ。今日からここが彼方の居場所だよ



せっかく居場所も、僕の存在理由も教えてくれたのに……ごめんなさい。



______ガシャンッッ!!!!


リビングにある大きな窓ガラスが割れる音が炎の轟音に混じって響いた。


「彼方!!彼方っ!!おいしっかりしろッ!もう大丈夫だからな」


蹲っていた僕の体を抱いて揺する人。もう分かってる、誰なのか。


「たい、き…さん?」


「喋るな…ゴホッ外に出るぞ」


僕はびしょびしょに濡れている大輝さんの特攻服に包まれてタオルで口と鼻を押さえ付けられる。僕は大輝さんの腕の中で気を失った。
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