青い星を君に捧げる【弐】
《side.佐野大輝》

トラブった下っぱメンバーの様子を見るために遼玄と夜道を歩いていた最中。英治から電話がかかってくる。


『大輝!!大変だ』


「どうしたんだよ、またトラブルか?勘弁してくr『彼方の家が火事になってまだ彼方が中に取り残されてるって近くを通りかかったメンバーから連絡がきて…』まじかよ…」


隣で俺の険しくなっていく顔を見ていた遼玄にスマホを投げ渡して走り出す。…なんで、どうしてあいつなんだよ。幸せにしてやってくれよ。


すぐに彼方の家につくと取り乱した彼方の母親が呆然と家を見つめていた。


「おい!彼方はっ?!まだ中なのか!!!」


胸ぐらに掴みかかって問いただすも、彼女は口を開くことは無い。時間の無駄だ、と判断して俺は手に持っていたペットボトルの水を被る。そして隣にいる遼玄の飲みかけのものも特攻服にぶっかけた。


「お、おい大輝…まさか」


「遼玄、そこの女見張っとけ」


俺は燃えあがる家の中への侵入を試みるため玄関に行こうと思ったが、既に高音になっていたノブが触れない。


近くにあった物干し竿ですぐに取り、それでリビングであろう場所の大きな窓ガラスを叩き割る。


一気に酸素が入ることによって火は勢いを増す。水で濡らしておいた髪は乾き始める。


「ゴホッ、ゴホッ…くそっ」


彼方がすぐに見つかることを祈ってリビングに飛び込み、目を守るための腕から辺りを見渡すと彼方が床に倒れ込んでいるのが目に入った。



その小さな体を抱き起こして、頬を軽く叩く。彼方の瞼が揺れた。


「たい、き…さん?」


「喋るな…ゴホッ外に出るぞ」


彼方は大丈夫だ。幸い意識を失いかけて蹲っていたから喉もやられていない。俺が着ていた特攻服で彼方を包む。


絶対に助けてやるからな……。


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遼玄が電話してくれて出てきた時には救急車が到着していて、その後に消防車も到着して消火活動が始まる。彼方と俺は救急車に乗せられて病院に運ばれた。



「重度の気道熱傷によるもの、ですね。治療は試みますが……治る見込みは薄いかと」


喉が焼かれた、そうだ。声が掠れてしまって何文字が話すとやがて声は出なくなる。


それでも彼方を助けられたなら、その代償なら安いものだと思った。


「大輝…どうだ?」


診察室から出ていた俺に椅子に座っていた遼玄が問う。俺は首を横に振った。


『彼方は?』

スマホに文字を打ち込んで遼玄に見せる。…手話ってやつも勉強しなきゃいけないのかもなとその時思った。


「今は寝てる。検査結果だと特に後遺症も残らないそうだ」


『母親は?』

「落ち着いたら事情聴取。俺たちの入る出番じゃないな」
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