青い星を君に捧げる【弐】
彼方の病室に入る。穏やかに眠っている彼方の顔についたススを手で拭う。俺もそうだが、彼方も髪の毛先が若干焦げてしまった。


「ょ……あ」
よく頑張ったな


____トントン

病室がノックされ遼玄が答えると入ってきたのは警察官だった。礼をして中に入るように促す。


「……彼方くんを助けたのはあなただと聞きました。そして後遺症のことも」


『彼方はこれからどうなるんですか』


「母親は精神病院へ送られることが決まったので、恐らく施設で生活することになります」


静まりかえる病室内に彼方の気持ちよさそうな寝息だけが聞こえる。……この子には何の罪もない。ただ育ててくれるはずの親がちゃんとしてなかっただけ。


『2年後…俺は20歳になります。彼方のことはその時に養子縁組で引き取ります』


これから先、彼方の人生。守ってあげたい。実の親からの関係を断ち切るには特別養子縁組じゃないと行けない。でもそれには俺の年齢が足りてないのだ。


「俺もそれに青龍の奴らも助けるぞ」


『遼玄…ありがとうな』


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《side.佐久間彼方》

重たいまぶたを上げると知らない天井。それに消毒や独特な匂いがする。機械音がずっと聞こえる。


ベッドに横になっていた身体を起こすと、僕の手を握りながら丸椅子に座って寝ている大輝さん。それから壁沿いの長椅子で腕を組んで寝ている遼玄さんと英治さんがいた。


なんでこんなところにいるんだっけ……。思い出した記憶に目が覚めた。背筋に嫌な汗が流れる。


「…大輝さん、大輝さん」


「……ん」


大輝さんの腕を揺する。ベッドに体を預けていて変な格好で寝ていたからか、体が痛そうだ。


『体はどう?』


大輝さんは何故か話さずに僕にスマホを見せる。


「大輝さん…なんで話さないの?」



『声、なくなったんだ』


「それって、僕のせい、だよね。火の中助けてくれたから……ぼくのせいだ!!!」


僕が、大輝さんの声を奪ってしまった。大輝さんに顔を向けられなくて俯く。ぎゅっと爪の先が白くなるほど布団を握った。涙がぼろぼろと落ちては染みていく。


泣きたいのは大輝さんのはずなのに、部屋の中は僕の嗚咽だけ。


そっと大輝さんの手が僕の強く握った手を解いた。そのままその手は肩を掴んで僕に顔を上げるように促す。
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