青い星を君に捧げる【弐】
桃討伐計画開始まであと4日。私は日本を出て中国の本郷支部へ匡と来ていた。今の私は朧月の姫という地位を隠している。

「夜、桃と関わっているという組織に接触するらしい…行くだろ?」


「もちろん。そこで桃を説得して日本に連れ帰る。“彼”は絶対に殺させない」


与えられた部屋に戻って支給された服に着替える。防弾チョッキに本郷家の印がついたコートを羽織る。革手袋をつけた。太ももにつけられたベルトにはナイフ、そしてピストルを腰に装着する。


そして私はベッドの上に置かれた重々しい箱を見つめる。これを持って実際に何かする日が来るとは思ってなかった。


鍵を開けるとアサルトライフルが入っている。……こんなもの本当は使いたくない。だけどこれで彼を救えるなら。私は、やる。


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構成員の人数は私と匡を含めて8人。あくまで桃と天沢家そしてマフィアとのつながりを確信するための最終情報を得る、というミッション。その中で必要であれば戦闘も許可されている。


そして私はここで桃を説得しなければいけない。


「計画通りで行きます」

「「「「了解」」」」


一気にペアになって荒れ果てた敷地へと進む。ライフルについたライトを頼りに敷地内にある倉庫に入る。


「……向こうはもう接触したらしいな」


同じく倉庫に入った別ペアの方から銃撃音が聞こえた。戦闘は避けられなかったようだ。そして私たちの方にも走ってくる足音が。


「ハル、ここは俺がやる。先に行け」


「頼んだ」


匡に背中を預けてすぐに角を曲がる。どの人よりも早く桃に接触しなくちゃ。その焦りが私の走りを加速させる。


____ギィ

広いホールのようなところ。中はやはり荒れ放題で草も生えている。もはや自然と一体化されているような場所だった。天井はところどころあるがほとんど抜けていて、くぼみには雨水が溜まっている。


ライフルのライトを消して慎重に進む。その時だった。


右から何かが飛び出してきて私の体は半ば突き飛ばされ、持っていたライフルは遠くに投げ出される。


しまった、やばい。
ここじゃ視界が悪すぎる。


相手に突き飛ばされた反動を利用して背後に回り込む。固いブーツの底で背中を蹴り、おそらく落ちたのであろうコンクリートの天井まで飛ばす。


隙を与えまいと全力で走って相手に追撃を試みるが、素早く立ち上がって首を狙われる。
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