青い星を君に捧げる【弐】
「グッ…」

背格好からして男。力任せな勝負だったら負ける。相手からの手刀を見切ってしゃがんで避け、左脚で男の足をすくう。


しかしそれで倒れるはずもなく、少しバランスを崩したところで手をつきバク転して私と距離をとる。


その隙に私はピストルを取り出し、後ろに回ったであろう男に銃口を向ける。そしてそれは相手も同じで既に私の方へとピストルは向けられていた。


「よお、久しぶりだな。なんでお前がこんなとこにいるんだ、波瑠」


ちょうどよく雲に隠れていたはずの月が顔を出し、月明かりが私たちを照らす。男の顔を見て私の考えは正しかったのだと、にこりと微笑んだ。


匡に写真を見せられてすぐに悟った。画質が荒ければ手ブレも酷い写真。だけど間違えるはずがなかった。はじめて会った時に“ 神様みたい”だと思ったから。


あの時彼方が月の光に当たっている方が綺麗だと言ってたけどそれは本当だ。今も彼はこんなにも綺麗な髪をしている。


「湊…いやここでは桃って言った方がいいのかな」


お互いが認識できてもピストルは下さない、緊張状態が続く。


「お前のその本郷って苗字、まさか本郷家と繋がっている以上に本筋の人間とはな」


「湊、そのことはいくらでも話すから。だから天沢家から手を引いて。おねがい、じゃないとッ!!」


____ドカァァアアン


近くした大きな爆発音と衝撃で一帯が揺れる。思わず姿勢を低くして耳と目を塞ぐ。


「…ザザザッ……外4名負傷、撤退命令」


今の爆発に巻き込まれたのか外を探っていた4人が負傷した、という連絡。そして撤退命令。


「じきにここに俺の仲間が来る。そしてその時敵対状態の俺たちを見てお前は殺されるだろうな。…俺はお前を死なせたくない」


爆発の瞬間、湊は庇ってくれたのか私に覆い被さるような体勢になっていた。真っ直ぐに見下ろす彼に私は硬直していた体を緩める。


「お前はたまたまココにいた、その設定で俺について来い。明日朝早く逃がす手筈は整える」


「……わかった」


湊は私を跨ぐように上半身を起こす。それに続いて私も半身を上げる。離れたはずの私たちの距離がまた近づく。吸い込まれそうなほどの蒼い瞳に私が写る。


「あの日、私が湊に送り出したのはこんなことをするためじゃない」


____ああ、散歩に行ってくる


____行ってらっしゃい、気をつけて
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