青い星を君に捧げる【弐】
「こいつは 浩然(ハオ ラン)。俺たちの活動に賛同してまとめ役をしてくれてる」


「おいおい、桃。そんなに喋っちゃっていいのか?」


ハオさんは笑いながら湊の肩を肘で小突く。気さくそうな人でよかった。どうしてもこういう人は厳格な性格の人がなりがちだから。


「お世話になります、波瑠です」

「狭っ苦しい男ばかりの場所ですがゆっくりして行ってね」


どちらともなく握手を交わす。ハオの紺色の髪が夜の中で照らす街灯の下で揺れる。


「波瑠…行くぞ。積もる話があるからな」


「うん。じゃあハオさん、また」


「またね」


先に行ってしまった湊を追って石造りの施設に入る。だいぶ古いのか廊下を照らすのは点々と壁についているロウソクのみ。


螺旋階段を上るとまた廊下に出て、1番奥の部屋に入った。湊は手慣れたように近くの棚に持っていた鍵とピストルを置く。

それと同時にマッチ箱をとって、部屋の所々に配置されたロウソクに火を灯す。重たそうな窓を開ければ夜風が吹き込む。


「湊はなんでこんな活動に参加するの…天沢家とどういう関係なの」


「俺は、俺の救いたいもののために天沢を利用する。ただそれだけだ」


「それなら、それは本郷(うち)で支援する。だから…」


湊は11月の風に乗ってやってきた葉を掴むと、ぐしゃりと握りつぶした。パラパラと砂のようにこぼれ落ちるそれを私は見ているだけだった。


「それじゃあ助けらんねえんだろ。……もういいだろお前の部屋は隣だからなんかあったら声かけろ」


ぐいぐいと肩を押されて暗い廊下へ追い出され、雑に目の前の扉は閉ざされた。


「聞いて!!!このままじゃ湊は死んじゃうんだよっ!!」


しかし中から応えるような音はひとつもしない。どうすれば彼を日本へ連れ帰られるか、邪魔な髪をぐしゃと握った。


このまま明日になれば私は湊によって返される。そうなればもう二人で話せる機会は、ない。ぐるぐると考えが交差して寝れる気配もなく、与えられた部屋に入らず施設の中庭に出た。


____カサ

「…誰だ」


木の下に立っていた私は物音がした茂みに銃口を向ける。誰もが寝静まっている時間帯。そのおとの正体はハオさんだった。手を上げてヘラりと笑いながら出てくる。


「桃が連れてくるからただの女性じゃないとは思ってましたけど、ここまでとは。どうかそれを下ろしてくれませんか」


どうかしましたか、と私はピストルを腰に戻しながら尋ねる。ゆるりと手を下げたハオさんは木によし掛かる私に近づく。
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