青い星を君に捧げる【弐】
「とにかく会場に急ごうか。話は車の中で聞かせてもらっていいかい?リンファさん」


「はい。よろしくお願いします」


彼女__リンファという女の子は純粋すぎるのではないか、と俺は揺れる真っ赤なリボンを見て思った。


確かに俺は彼女を助けたけれど、こうもあっさり知り合ったばかりの男たちしかいない車に乗るなんて。


「どうかした?」

俺の視線を感じたのかリンファは振り返って首を傾げた。どうやら、俺はリンファと好きな人を重ねて見てしまうらしい。

彼女の緑とも青とも言い難い透き通った瞳に見つめられ、頭を揺すった。なんでもない、と言い彼女の横を通った。






俺たちの乗ってきたタクシーは7人乗りだったため理事長は助手席に、彼方と優が1番後ろ。そして最後に乗り込んだ俺とリンファは中央に座る。


「それで、リンファさんはどうしてマスカレードに行きたいのかな?」


進み出し揺れる車内で理事長が話を切り出した。崩れがないか髪を触っていたリンファは座り直し、どこから話せばいいのやら…とドレスの上で組んでいた両方の親指をくるくると回す。


「……わたしが探している人、名をランと言います。彼がマスカレードに出席しているという噂を耳にしました」


「それは確かなの?」


後部座席に座っていた彼方が身を乗り出して聞く。


「これが彼につながる唯一の情報だから。信憑性が薄くても行くしかありません」


彼女は親指を止めてぎゅっと手を握った。リンファのその思いは痛く共感できる。俺も消えたツキを追っている身。どんなくだらない噂にも振り回されていいと思っている。


「リンファさんとランさんのご関係は?」


優が訪ねた質問はここにいる皆の興味を引いた。


「わたしとランは同じ郷で育ったの」


長くなりそうだな。
川に月が映る。こんな夜は月桂樹が現れそうだ。俺はリンファの声に耳を傾けながら目を閉じた。
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