青い星を君に捧げる【弐】
このセントラルビルはあくまで商業用の建物として機能しているらしく、中心街の高層ビルなので大勢の客で賑わっている。

つまり、入るだけなら容易であるのだ。


全67階で構成されるビルは10階までは物販スペース、11階から59階までは様々な企業が入っている。そして60階から最上階までが、ハオ・ランが率いるマフィアの本拠地だ。


60階からの8フロアのどこかに湊はいる。しかし60階に入るには厳重な警備を潜り抜けなければならない。


素直に60階直結のエレベーターに乗り込んで構成員と鉢合わせれば射殺されて終わりだ。


「まずは59階までエレベーターを乗り継いで行った方が良さそうだね」


彼方がいつになく真剣な声色で言う。生きるか死ぬかの侵入を今からするのだ。当然か。今まで彼らが掻い潜ってきた戦いとは違うのだから。


一般客に紛れて、エレベーターやエスカレーターを使って高層ビルの上階を目指す。11階のフロアに入るにはカード認証が必要だったが、タイミングよく通りかかったサラリーマンの後ろをついて通った。



「なんかさ、順調すぎて怖いね」


無駄に広く綺麗なエレベーターの中で彼方が呟いた。
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