青い星を君に捧げる【弐】
《side.本郷波瑠》

タワーの爆発までの残り時間はごくわずかだと考えている。長い時間を取るのはラン側にメリットがないからである。


上階に残っていて警備をしていたマフィアたちに接触しては倒すことを繰り返しているうちにフロアは静けさに包まれていた。


__最上階。

中に人の気配を感じる部屋の扉の前で私は深呼吸した。気配は2つ。


重っ苦しい扉を開くと湊が手足を拘束され、気絶していた。これが罠であると感じるものの、私は彼へと駆け寄る。


「想定よりもだいぶ早かったな」


壁に寄りかかっていた男が口を開く。この男の顔を私は知っている。昨夜、マフィアのことを探った時に見た。ランに次ぐ権力の持ち主。


お金の流れに力を入れてきたランと、単純にマフィアとしての力を求めていたこの男。


「あなたの思惑通りランはリンファによって目を覚ましてしまった。……計画は丸潰れだ」


「私の知ったことではないね。おしゃべりする気分は生憎持ち合わせてないんで、彼を連れて出て行くよ」


「俺が桃に何もしていないと思っているのか?」


男の声に私は湊へと伸ばした腕を止めた。


「桃に打ち込んだ毒の解毒剤はここにある」


「このタワーを出た後でも間に合うはずだ」
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