室長はなにをする人ぞ
早川さんのデスクはこっちに、と彼が部屋の奥をしめす。

促されるまま足を進める。ドアからは書架の陰になっている右手の壁にそって、デスクが二つ並んでいた。
物が置かれていないほうがわたしのデスクなんだろう。
とりあえずバッグを置かせてもらって、パソコンを起動…と足を進めていたわたしは、盛大に蹴つまづいた。

小さい悲鳴とともに、前のめりに倒れそうになる。

おっと、と横からすばやく伸びてきた腕がわたしの身体を受け止める。

彼の腕を支えに、棚に手をついて、わたしはどうにか体勢を立て直すことができた。

「ごめん、早川さん」
離れてゆく腕とともに、すぐ隣で五嶋さんの声。

「散らかってて」

わたしが(つまず)いたのは、床に積まれていた製品カタログとおぼしき冊子の山だった。
見れば部屋のあちこちに、棚からあふれ出したカタログが小山を作っている。

「あ、いえ、ありがとうございます」
口早にお礼を言う。
動悸がなかなかおさまらない。

転びそうになった動揺からか、それとも意外なほどに力強い腕の感触のせいだろうか。
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