室長はなにをする人ぞ

第二章/イカロスの扉



「早川さん、K社とD社の15年くらい前のシステムキッチンの総合カタログを持ってきて。並行してH社に問い合わせメールを送ってみる。照明器具に詳しい人がいるんだ」

五嶋さんの指示に、はい、と腰を上げる。
最新版のカタログはウェブで公開されていることが多いけど、過去の製品を探すのは、資料として保管してある冊子が頼みだ。

今日も調査室の主な仕事の一つ、探し物だ。
水回りのリフォームを請け負った個人宅で、キッチンの手元灯が気に入っているので、できれば同じ物をという依頼だった。

調査室の名の通り、ここに着任して以来、多くの時間を調べものに費やすようになった。
確かに根気のいる仕事だった。

調査室の専用アドレスにメールが寄せられる、あるいは電話がかかってくる、ときに直接ドアをノックする営業マンもいる。

一番多いのは、こんな物を探している、手に入らないか、という問い合わせだった。

メールに添付されている現物の写真、持ち込まれた現物の一部、竣工時の図面などを手がかりに、物を特定してゆく。
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